第57代 部会長 古橋知樹

【基本理念】
誰一人取り残さない!
活力を相互波及させる青年経済コミュニケーションを確立しよう

 

【スローガン】
 The Submarine
〜誰一人欠ける事なく、皆で難局を潜り抜けよう〜

所信】
≪ラーメン屋から全ては始まった≫

私が日本青年会議所水産部会の存在を知ったのは6年前の京都会議でした。当時入会したばかりの私は、現場を離れづらい水産業では満足にJC活動に参加できないと諦めかけていました。そんな折、たまたま行きがけに立ち寄ったラーメン屋で、今尚尊敬してやまない広島市の先輩と偶然相席する事になりました。あまりにも何気ない出会いに運命を感じずにはいられません。

思い返せば馴れ馴れしい挨拶にも気さくに応じてくださり、その時初めて水産部会の存在を知る事になりました。生き物を扱う職業であってもJC活動で十分な学びを得られる道があると知り、以後、所属LOMの浜松青年会議所では後方支援の要の「Mr.広報」として尽力する事になります。家業の内水面養殖業においてもその経験が生き、地元特産品である「浜名湖うなぎアンバサダー」の地位を確立するまでに至りました。

此度はその御恩に報いるためにも、第57代水産部会長の責務を全うして参ります。

≪遠く離れていても絆を感じられる、新しい事業モデルの構築≫

過去56年間に渡り牽引された諸先輩方は、絶滅危惧種の資源保護対策や離島振興、豊洲市場移転問題を始め、数々の問題と真摯に向き合い、現地視察や勉強会、時には政策提言も行ってきました。

いついかなる荒波でも前に進み続けた水産部会ですが、その全ての原動力は「明るい豊かな社会」を築き上げたいという信念にあり、その共通した想いが、世代を超えた全国スケールの水産ネットワークで繋がっています。

今や少子化に加えコロナ禍が現役会員の減少に拍車をかけていますが、実は人口比に対するJCメンバーが占める割合は2010年以降横ばいであり、女性会員はむしろ増加しています。これは自らの問題を己の成長でもって克服する機会を得られる公益社団法人日本青年会議所と、その志を共にする水産部会の絆の力が必要とされていると私は考えます。

新型コロナウイルスが猛威をふるい、活動に制限がかけられた中で知恵を絞った2年間は、間違いなく水産部会の新たな可能性を広げました。
特に地域の制約を取り払って他県の水産高校を引き合わせたWEB講演会に挑戦した事や、10年経った今尚東日本大震災の国際的風評被害で苦しむ三陸の海産物に国内販路開拓の事業モデルを提案した事は、水産業界誌やJC機関誌にも取り上げられました。内外から大きな注目を集めただけでなく、対面でなくても多くの参加者を集める事に成功したのです。

2021年度スローガンが「温故知新」でしたが、2022年度は1965年に盃を交わした時から続く伝統を継承すべく、本来あるべき全国各地での実地開催を模索します。加えて、様々な事情で従来の部会に参加できなくなった方でも積極的に関われるようWEBを活用した事業も並行して実施する事で、距離と時間の制約を越えて会員皆で知見を共有致します。

≪世界一の魚食文化を復活させる一筋の光≫

私は2022年度において、自らを潜水艦に見立てたスローガンを定めました。コロナ禍で日本経済が極端に冷え込み、水産業と一蓮托生の関係にある外食・観光産業は特に大打撃を受けました。ワクチン接種が進んでも尚、深海のように先行きが見えず、愛する家族や社員を守るために重圧がのしかかる毎日です。その暗闇でも潜水艦の如く突き進むためには、生活様式が一変し、人と人との繋がりが希薄になった今だからこそ支え合いが大切で、潜水艦の一切の隙間のない溶接のように、固く柔軟に結ばれた絆が不可欠です。

幸か不幸か長年続いた魚離れは、外出自粛の影響で生鮮魚介類の購入量が1世帯当たり1kg近く増えて23.9kgとなり、18年ぶりに前年を4%上回りました。
1人当たりの魚介類消費量が半世紀で約2倍に増え、若者にとって人気の高収入職種になっている世界の水産業に比べると、働き手の平均年齢が56.9歳と突出して高齢化し、半世紀前と同水準の消費量にまで落ち込んでいる日本はまだまだですが、僅かな好転であってもこの挽回の機を逃す手はありません。
まだまだですが、僅かな好転であってもこの挽回の機を逃す手はありません。今はまだ数少なくとも、若手水産業者の熱意が人々の胸に突き刺さるよう、今こそ世界一の奪還に向け、狼煙をあげなくてはなりません。

JCIにおいても2022年度は世界中の青年経済人が集結する祭典「ASPAC」が大阪で開催されますので、日本の底力を海外にPRする絶好の好機と捕え、水産部会一丸になって大いに盛り上げて参ります。

≪大地の恵みに感謝し、豊かな海を取り戻そう≫

今現在の魚介類消費量は世界第6位、漁獲生産量に至っては1980年代の3割程度の417万トンと世界第10位にまで転落している我が国ですが、本来日本は世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を誇る海洋大国であると同時に、森林率(陸地面積に占める森林面積の割合)においても、先進国第2位の685%を誇る森林大国でもあります。実は山と海には密接な結びつきがあり、中でも森林の25倍のCO2を吸収するブルーカーボンが形成され、そこに7割の海洋生物が棲みつく沿岸域は、山々からバランス良く栄養がもたらされる事で豊かな海を維持してきました。

しかしながら大地の恵みを支える林業や農業もまた、海外競争や後継者不足等で縮小しています。山林のみならず、水生生物のゆりかごである田園地帯の荒廃も進み、海がやせ細る一因にもなっております。今では漁師が木を植え、海を守るために林業に転職する方まで出ている時代ですが、我々水産部会では創設者である古野清賢(ふるのきよかた)名誉会長が掲げられた「もっと食べようおいしいお米と海の幸」のキャッチフレーズの下に魚食普及事業「魚米(うまい)」を展開、一世代も前から農業と連携してきました。

それは決して一方通行ではなく、海もまた、魚の遡上等を通じて大地に栄養をもたらします。ある水産会社が2021年の新聞広告で国内総生産(GDP)と魚介類の年間消費量の経年変化が一致している事を発表されましたが、今こそ我々水産業界が息を吹き返す事で、林業や農業にも活力を与え、日本経済を希望の光で満たす事ができるのではないでしょうか。

2022年度においては農林水産業が相互活性化する重要性を共通認識として内外に広めて参ります。まずは第1歩として、農林水産業連帯応援ブログ「魚米を山盛り(山森)」を開設し、「海なし県」での親睦を深める部会設営を行います。
将来的に陸海の一次生産業全体が活性化する協力関係が全国各地で派生していくよう、その基礎を作ります。

≪誰一人とて深海底に取り残さないために≫

近年は約70年ぶりに漁業法が改正され、関連法と相成って、より厳格な資源管理と流通自由化・透明化が大幅に進みました。漁業生産量が向上し、日本の水産業が息を吹き返す事が大いに期待される中、各地で新しい取り組みにチャレンジする地域が増えています。

ただもしもその陰で、海底に取り残されたまま孤独に人知れずもがいている方がいるとしたら、手を差し伸べ、誰一人欠ける事なく全員で浮上するのが水産部会のあるべき姿ではないでしょうか。
まず我々は東日本大震災以降10年以上も長く苦しみ、今尚人口流出や原発被害と戦い続けている福島県浜通りを視察し、現地の想いを受け止めて参ります。

最後になりますが、我々は深海のどん底でも耐え抜ける不屈の潜水艦となるべく、多種多様な背景を柔軟に分かち合う事で、より固く結ばれた、最強の「絆の溶接力」を皆様と共に作り上げていく所存です。
近い将来、生産額や消費量だけで母国が世界一に返り咲くだけではなく、皆で明るい豊かな社会を迎えられるよう、全国各地で活力を呼び起こし、青年経済コミュニケーションを通じて日本全体に元気を相互波及させて参ります。1年間ご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。