第55代 部会長 石川 隆将

【基本理念】
持続可能な水産業を目指し、未来を共創しよう

【スローガン】
「海はひとつ」~固定観念に捉われず、勇気ある一歩を踏み出す~

所信】
1965年9月24日、日本青年会議所水産部会は横浜の地で産声を上げました。横浜で開催された全国大会の夜、水産関係メンバーが集まり盃を交わしながら、水産業の未来を語り合い、夢を馳せました。先輩諸兄姉が、未来をおもい、熱き情熱で紡がれた日本青年会議所水産部会は、本年度で創立55年を迎えることになります。時代が移り変わり、環境の変化など多くの問題を抱えることとなった水産業界ですが、我々は創始の熱き情熱を心に刻み未来を見据えて歩んでいかなければなりません。

現在水産業界を取り巻く環境は、海水温の上昇・少子高齢化による後継者不足・栄養塩不足・資源乱獲など、数えきれないほどの多くの問題を抱えています。その中でも顕著に数字に表れているのが、漁業従事者の減少です。

現在の日本の漁業従事者数は約16万人といわれており、急激な減少傾向にあります。過去50年間の間に従事者数は3分の1以下となり、また従事者の全国平均年齢が60歳を超えていますが、地方の小さな漁村ではさらなる高齢化が進んでいます。

小さな漁村を支えるのは、小漁師といわれる家族単位で行う漁業であり、漁獲量の減少も重なり、持続することすらままならない限界集落も数多く存在しています。

私は、三重県志摩市の浜島町という小さな漁村で生まれましたが、カツオの遠洋漁業で栄えたこの町も現在では、大型のカツオ漁船は廃業し、小漁師の漁業が中心となり、漁業従事者の平均年齢は70歳を超えてしまいました。「魚が食べられなくなる時代が来る」こんな言葉を最近よく耳にするようになりましたが、「その時」は我々が想像するよりもはるかに早く忍び寄ってきているのです。だからこそ、我々は青年会議所活動を通じて得た学びを水産部会の活動においても発揮していく必要があるのです。

今こそ立ち向かう時です。

顔を上げ、前を向き、我々が先導者として日本の水産業の明るい未来に向け、勇気ある一歩を踏み出しましょう。

「やりたいこと」ではなく、「やらなければならないこと」をこれからの社会では実践していかなければなりません。国連が掲げた2030年に向けての開発目標もそのひとつですが、現在まで先人が実践してこられた既知を探求し、さらに先進的な取り組みを取り入れることが水産業界においては急務であります。水産部会で実施する事業においては、これから「やらなければならないこと」を問題として提起し、事業構築を進め、先進的に実施されている資源管理や漁業の仕組みを学び、水産部会内で共有し、各々が活動する地域で実践出来るよう推進して参ります。

また、海外研修においては世界でも先進的に資源管理に着手し、資源を安定させたことで漁獲枠を20年で20倍に増やしたオーストラリアの地を訪れ、学びを得ます。2、3年で結果が出ることではありませんが、包括的な取り組みを真摯に学んでいく必要があると考えます。包括的に取り組むことは、山を守り、海を守り、漁業を守り、加工業を守り、流通業を守り、消費者を守ることに繋がると考えます。全ては繋がっているのです。

そして、もう一つ大切なことは、海の豊さを守るために一人ひとりが自覚を持って行動をとらなければならないという意識を醸成することです。

私の地域を例に出すと、定置網や巻き網の漁法では、重量ベースで漁獲量の20%が流通し、80%が餌や肥料または、廃棄するという現状があります。

つまり、消費者が食べたいと思う、高く売れる20%の魚を漁獲するために、小さな魚や珍しい魚、いわゆる未利用魚を80%も廃棄しているのです。

我々はこの現状を未来に紡いでいけるでしょうか。

我々が生活する資本主義における消費社会のすべてを否定することは出来ませんし、当然私自身もこの社会で生きています。しかし、誰かが行動を起こさなければ、先人から紡がれてきた大切な根幹を忘れ、消費というエンジンを用いて経済を動かすことだけが目的となり、大切な資源を未来へと紡げず、枯渇させる社会となってしまうのです。しかもこれが、グローバルに行われているのです。果たしてこれが持続可能な社会と言えるのでしょうか。

今から行動しなくてはなりません。部会を通じて先進的な事例を学び、流通の仕組みの改革や商品開発力を持ち寄り、水産部会から変革をしていく一歩が必要なのです。

社会全体を変えることは、多くの時間と大きな力が必要です。しかし、社会が変わらなくても自分たちが変わることは明日からでも出来ます。何かひとつでも勇気を持って一人ひとりが一歩だけ踏み出しましょう。我々がJAYCEEとして価値感を昇華していったその先にはきっと、明るく豊かな水産業の未来が存在しているはずです。

「海はひとつ」水産業に従事するひとりとして漁業区画に捉われず、既存の枠組みを超えて連携していく重要性をスローガンに込めさせて頂きました。本年度は創立55周年という節目の年であります。水産部会員が一丸となり、未来への約束と部会員の結束を高めていくことが今後の水産業界には必要です。創立55周年を機に改めて水産業界の未来を見据えるためにも記念式典と記念事業を行い、現役会員とシニア会員の結束をさらに高めていきます。

水産業には多くの時間は残されていません。漁業区画や行政区画に捉われることのない、水産部会のネットワークを活かし、海をひとつなぎにし、共有していくことこそが、いま必要だと確信しております。

海は繋がっています。水産部会も繋がっています。水産部会でなければ成しえない目標を持って邁進して参りましょう。

結びに創立55周年という節目に部会長を拝命し、その大役を担わせて頂きますことに感謝すると共に、その重責に身の引き締まるおもいです。水産部会現役会員とシニア会の先輩諸兄姉の皆様と共に英知と勇気と情熱を持って、水産業の明るい未来への一歩に繋がるよう全力で邁進して参ります。シニア会の先輩諸兄姉の皆様におかれましては、ご指導、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

日本の水産業を水産部会から力強く変革して参りましょう。

皆様1年間どうぞ宜しくお願い致します。