第12話 1年間の締め括りは「海なし県」で!水産部会長が林業組合と対談を行います

いよいよ今年度最後の部会が近づいて参りました。
それも水産部会なのに「海なし県」、栃木県日光市での開催です!実際にシニア会の多くの先輩達から「どうして日光?」と質問が相次ぎました。
でも山々に囲まれた日光は林業が盛んで、森は海の恋人と例えられるくらい密接な関係があって、栄養分でいえば海の原点は山にあるといっても過言ではないのです!

だから水産部会だから海ばかり回ればいいなんて私は違うと思います。少なくとも沿岸域の痩せた海を取り戻すためには、大地が再び栄養豊かになる必要があって、山々の荒廃の原因や林業の衰退にあります。
今、林業を生業をする人達が何に直面し、どう乗り越えようとしているのか、私達水産業界にできる事はないのか、それを突きつめるのが11月度日光部会なのです。

私はむしろ最後を飾るに相応しいさえ思います。森林組合との講演と対談の中で、絆を深め、希望を見つけたいと思います。

第11話 福島県浪江町から耕作放棄地を救う話

8月19日は福島オンライン事業として、浪江町の皆さんと交流させて頂きました。
その内の一人がバイオマスレジン南魚沼&福島の社長さん達でした。
新潟県と同じく、美味しいお米の産地として有名な福島県ですが、数年前まで原発被害により全町避難していた浪江町では、除染されて安全になったにも関わらず風評被害によって稲作ができない状況でした。

それを破砕米だったり、非常用途の保存期間が切れたりした非食用のお米を原料にしたプラスチック「ライスレジン」を製造するバイオマスレジン南魚沼様が、耕作放棄地となりつつあった田んぼをライスレジン用の資源米の田圃として蘇らせ、さらには浪江町内にライスレジン工場を建設する事でバイオマスレジン福島を設立、浪江町にもっと人が戻りやすいよう新しい雇用を生み出そうとしています。

ライスレジンはお米の成分が含める事で石油由来の原料を減らしており、海洋プラスチック問題に代表されるような環境負荷を軽減させる効果がありますが、水生生物のゆりかごとして河川の生態系、ひいては沿岸域の生態系を支える稲作地帯を復活させるという多大な貢献をされています。
美味しいお米は地球を救う!?皆さんには美味しいお米と美味しい魚を食べながら、環境保護に関心を持って頂き、お力添えを頂けたら嬉しく思います。



ライスレジンの商品の一例です。様々なものに取り入れられています。



鰻重に代表されるように、美味しい魚は美味しいお米で引き立てられるのです。

第10話 美味しい海苔が育つ常滑は空港建設のおかげ?

日本青年会議所水産部会は、日本青年会議所の支援団体として40を超える業種別部会の一つとして構成されています。
業種別部会連絡会議を通じて横の繋がりも硬く結ばれており、5月にはプロのBBQ職人による大交流会が企画されました。
今年度の議長はフードサービス部会から輩出されているだけに、食べ物の拘りには余念がなく。マッチョによって出前される寿司マッチョや、源流である兎のお肉を具材にした超巨大パエリアが振舞われました。

各部会による差し入れもあり、水産部会からは浜名湖うなぎの白焼きを提供させて頂きましたが、農畜産部会からはなんと、愛知県常滑市の鬼崎のりが寄贈されました。
この鬼崎のりは東京・銀座の高級寿司店からも注文が絶えない、全国トップクラスの品質で知る人ぞ知る名品と呼ばれています。
常滑市といえば中部国際空港が建設されており、この空港が海流をシャットアウトする事で木曽川から流れ出る山林の豊富な栄養を沿岸域に留め、美味しい海苔が収穫できるといいます。

数年前に大阪湾の海苔の色落ち問題がニュースで取り上げられておりましたが、これは排水基準を厳しくし過ぎたがために、海苔の成長に欠かせない栄養分を根こそぎ除去してしまった影響が大きいと言われています。
常滑市の排水基準もまた人目線でなく、海の生き物目線になっている事からも、大地からもたられさる栄養水がどれだけデリケートで大切さが良くわかると思います。

第8話 農林水産大臣に表敬訪問してきました!

日本青年会議所水産部会として、この度農林水産大臣を表敬訪問、8つの提言を提出させて頂きました。
水産部会なので国内水産業の未来のための要望ですが、一部の内容に先日の木材部会長、米穀部会長との三者会談によって挙がった課題・提案を盛り込ませて頂きました。

水産経済新聞様にみなと新聞様、アクアカルチャー様、日本養殖新聞様といった水産業界誌の他、部会長の出身県である静岡新聞も取材にお越しくださり、多くのメディアから注目が集まりました。

そこで直接大臣にお話しさせて頂いた「豊かな海を蘇らせるモデルケース作りのために、農林水産業の連帯特区を設定すべき」、そして書面にて提出させて頂いた「一次産業についての幼少教育を充実させ、価値をベースアップさせるべき」の2点になります。

沿岸域を豊かな海に戻すためには、林業・農業の隆盛が欠かせません。主に一次産業に位置する農林水産業は下に見られがちで、値上げが許されない風潮が強く薄給です。それ故、若者から敬遠される職業として、水産業だけでなく、農業・林業もまた 後継者不足に苦しんでおります。

山林や田園地帯を守る林業や農業が活性化していけば、大地が蘇り、栄養ある海を取り戻す事ができます。 崩壊危機が迫る所有者不明の人工山林に対し、それを叶えるためには所有者の特定はもちろんの事、世代交代後の認知・通知作業の徹底と、複雑な資産売買制度の簡略化が必須事項 です。それでも上手くいかない場合には他者が介入して手入れができる特例措置作りが急務です。

耕作放棄地対策としては人件費削減ができるよう行政に先導して頂き、飛び地の農地を集積化して大規模化させる区画整理が必要です。また現代の主流である低コスト大量生産の 経営戦略よる農薬・化学肥料の多用を防ぐ対策としては、有機農業や環境保全型農業を促進 すべく一反当たりに補助を出す制度を作るべきです。
特に水源近辺の放置された山林が崩壊すれば、その水で営む田園地帯も甚大な被害を受け、 山からも田園からも栄養が届かなくなり、自ずと水圏生態系にも悪影響が及びます。 まずは林業・農地の改革が海洋の水質改善に好循環をもたらす事例を作るべきです。そこで 山・農地・海が近距離に密集するエリアを選定し、既に実施されている農業のみならず、林業や水産業の三者が連帯した国家戦略特区を創設、有望な人材・企業を誘致されてはいかがでしょうか。

という内容です。

これに合わせて、一次産業がこれから伸びていくために農林水産物の価値の見直しと、教育機関や旅行・エンターテイメント業界等とのコミットを斡旋し、幼少時代からの農林水産業に対する体験教育を増やして頂く事をお願いさせて頂きました。

特に体験教育においては、高校まで行けばやっと進路選択のテーブルに農林水産それぞれの専門学校が並ばれますが、 それでは時すでに遅く、とりわけ林業高校には林業科に進んでも林業を志す生徒が僅かです。日本三大人工美林を持つ名産地であっても林家は地元の林業高校ではなく、都会の林業 に興味を持つ少数の若者に、オファーを出しているような状況なのです。それほど現在の農 林水産業と若者の距離は縁遠いのが現実です。

もっと国にも国民にも、農林水産業者が流す汗を一から見直し、寄り添って頂きたく存じます。 そのためにもまずは国民の皆様には幼少の頃から農林水産業に慣れ親しんで頂き、政府は もっと儲かる魅力的な産業になるようにサポートすべきであり、一次生産者の想いや魅力を知って頂くためのPR費を捻出すべきなのです。

第7話 林業・農業・水産業の三者会談

今、ウクライナとロシアの戦争によって、水産物の多くは価格が上昇しましたが、林業ではウッドショックが起き、農業では化学肥料が枯渇寸前の危機にあります。
これは今までの価値観がリセットされるレベルの異常事態で、現実に私達の日常生活にすら影響が出ております。しかし同時に大きなチャンスでもあります。

今、農林水産業は海外輸出において最も大きな伸びしろがあり、政府は2030年までに輸出額を5兆円に到達させる事を目標にしています。一方で、農林水産業全てにおいて後継者問題を始め、共通の深刻な問題を抱え衰退が進んでいる事も事実です。

そこで私達と同じ日本青年会議所水産部会業種別部会である木材部会長と米穀部会長とオンライン三者会談を開き、農林水産業が相互活性化するために課題と対策の共有を行いました。

水産業でいえば山林・田園の放棄地拡大によって大地からの栄養分が沿岸域に来なくなり、海が痩せて海藻が育たず、魚が集まらなくなりました。それ故に漁師が木を植えたり、林業に転職するような事が全国各地で起きましたが、林業や農業がかつてのように活発にさえなれば、漁師は海に専念する事ができるのです。

何故今、所有者不明の山林が増えているのか、化学肥料や農薬に頼らない有機農法への転換が進みづらいのか、まずは我々水産業者も問題を知ることから始めました。そして逆に海がどれだけ山林や、水生生物のゆりかごと言われる田園からの栄養を頼りにしているかを知って頂き、三者がお互いを高め合える環境作りの必要性を認識する事ができました。

今回三者で話し合った内容は農林水産大臣への提言に盛り込ませて頂きましたが、これからも農林水産業三者の連携は強めていきたいと思います。

第6話 森林が豊かな海を育てる

大阪湾などの排水が綺麗になりすぎた事で沿岸域の栄養が少なくなり、不漁や海苔の色落ち問題を引き起こしている話は聞いた事はありませんか?
魚の餌植物プランクトンの繁殖に欠かせない窒素やリン等を、生活排水を綺麗にしようと徹底的に処理した事で、必要以上に取り除いてしまった事が原因に挙げられます。

森林と海の関係も同じで、バランス良く肥沃な山土の栄養を届けていて、それが植物プランクトンの生育を促します。山林には貯水機能もあるため、過度に栄養が流出しないように調整できる点も大切なポイントです。

しかし人工林については手入れをしなければ荒れてしまうにも関わらず、後継者不足や安価な海外木材によって淘汰された結果、林業は大幅に縮小、所有者不明の森林も増えて崩壊の危機にある山林が非常に多くなっています。そうなれば栄養どころか土砂災害が発生して、農地もろとも沿岸生態系が一気に崩れます。

海に貢献しているのは土だけではありません。釣り餌に欠かせないミミズや、ハリガネムシに寄生されて自ら川に飛び込むカマドウマなど、魚にとって大切な食糧が山の生態系の中で育まれているのです。

だから山地が荒れればおのずと海も荒れるのです。だから近年は漁師が木を植えたり、林業に転職したりしているのです。

第5話 田圃は水生生物のゆりかご

田圃には水生昆虫や魚の産卵場として大切な機能があるばかりか、例えばニホンウナギのような絶滅危惧種にとっても貴重な生息域として機能しています。
実際に稲田養殖といって、昭和後期から続く長野県佐久地域の食用ブナ等、水田を活用した養殖方法があるくらい、水田からもたらされる栄養は魚にとって欠かせません。

しかし昔に比べて現在の田んぼはコスト削減しなければやり繰りが難しく、多くの地域が化学肥料・農薬に頼らざるを得ない環境下にあります。
農薬を過度に使えば魚の餌となる水生昆虫が姿を消し、化学肥料にばかり頼れば土地は痩せ、そこから川へ流れ出る栄養はどんどん失っていきます。
極めつけには後継者不足も顕著になり耕作放棄地すら目立ってきました。

これでは海が豊かになれないのは当然です。
美味しいお米を食べる事は、手塩にかけて稲を育てる農家を応援するだけでなく、海や魚を守る事に繋がります。
特に有機農法や環境保全型農業を実践して作られているお米には是非もっと評価してあげて貰えたら幸いです。

美味しいご飯は魚を救うのですから!