日本青年会議所水産部会 提言(2003年2005年

---------------------------------------------

2003年度日本青年会議所 水産部会 

〜「水産資源はみんなの資源」〜

日本青年会議所 水産部会
2003年度部会長 大倉 幸也

はじめに 水産業はわが国に古くから繁栄してきた1次産業であり、国民の食糧供給に貢献してまいりました。そして現在、その伝統を継承しながらも新たな水産業を模索しながら邁進している状態です。近年は海外からの輸入や海外への輸出など、国内外問わず水産物が行きかっており、魚食文化も世界的拡大傾向にあるといえます。それゆえ古より水産物の利活用知識に富み、水産に慣れ親しんでいるわれわれ日本人が、全世界に向けて水産業および水産食の文化を発信していく責任もあるといえます。

 日本国内においては、海外の安価な資源(労働資源、生産資源、漁獲資源)を活用した加工品や冷凍物の国内搬入はますます増加傾向にありますが、われわれ日本人はそれらを有意義に活用していく必要があるといえます。また、水産食品物を生産・流通・販売していく企業も有意義に無駄なく資源を活用していく必要があるといえます。水産品への安全基準、工場内の社員待遇、衛生管理面という点で、世界的傾向としてHACCPやISOを取得している工場が増えつつあることは、消費者をも含めた食品を取り扱うもの全ての質の向上につながっています。

さて現在、われわれ水産業を取り巻く経済状況は、新たな転機を迎えていることは紛れも無い事実です。物価の国際価格への収斂は、わが国内では価格下落という傾向をもたらしておりますし、海外での水産物の利用度拡大は、わが国への水産物搬入の機会減少・原料価格の高騰という結果をもたらしております。こういった大きな変動にわれわれ水産業界の人間は対応していかねばならないといえます。 水産物のほとんどは、世界の7割を占めているといわれる大洋からの自然の恵みであり、資源は有限であるという認識をもちながらその生業を営む必要があります。前述のように製品に関する関心事は消費者をはじめとして業界全体で持っておりますが、有限資源という観点から、よりいっそうの資源有効活用という発想をもつ人もありますが、原料となるものには当然廃棄する部分があり、それをどうするかという発想を持つ人は残念ながら多いとはいえないのが現状です。廃棄する行為そのものは当事者に不必要だからという理由ですが、業界を超越したところにはその廃棄物が必要な企業・業界もあるということが容易に想像できます。この様に、水産物は水産業界の為だけの資源という観点を突き破り、水産物は全世界の人類に提供された資源という考えの下、よりいっそうの有効活用が必要となるといえます。

日本青年会議所 水産部会提言

日本青年会議所 水産部会がまもなく創立40周年を迎えるに辺り、将来の水産業へ提言をいたしたいとおもいます。 我々、水産部会員は、奉仕・修練・友情を三信条とする青年会議所に所属し、水産業の現場において第一線で活躍しているものや、魚をこよなく愛しているもので、其々の所属する団体からの提言とは異なり、同じ業種に居ながらも異なる職種である構成メンバーであることに大きな意義があるといえます。 この度提言する内容は、従来の水産資源の活用を鑑みつつ、より一層の資源利活用、資源循環利用の理想像に積極的に取り組み・臨むものであります。 また、机上論だけではなく、より実現味を帯びた資源循環を目指す為には、採算性、汎用性のあるシステムを構築する必要があり、生産性と効率を同時にバランスよく追求する必要があります。 そして、われわれは水産資源を循環利用化することは社会貢献であると捉え、全ては有限資源であるということへの啓蒙をすることにより、個々人の経済活動、消費活動等に影響を与えることとなり、地球という環境を共有しているという感覚を持つはずです。 水産業界人がこの資源の循環活用に対し真摯に取り組むことは、「We are the world.」、「 We are the children of the earth.」の実践に他なりません。そして取り組む為には、水産業界のみならず、全業界の協力と理解体制を得ることが必要です。

 これまで述べたことを実現するために、われわれは3つの柱と6つの施策をからなる 『水産資源はみんなの資源』を提案いたします。

提言1【有限資源の認識と教育】
水産に限らず、供給側と享受側には相互理解は必要不可欠ですが、モノの源である資源にまで及んだ発想を共有する必要があります。現在、生活・住環境問題がクローズアップされておりますが、自分の身の回りだけでなく、遠く世界にまで視野を広げた意識を持つことが必要です。 そこで教育機関、あるいは地域において自分の身の回りの環境から、さらに大きな環境、そして環境同士のつながりへと学習し、環境・資源は管理することが重要であるという意識を体験プログラムとして組み込むことが必要です。こうした教育は倫理観を高め、お互いの信頼関係を構築するものでもあります。このように生活・住環境から有限資源についての基本的思想が構築されることにより、社会貢献している諸企業に対する要望の高まりが強まっていくことに貢献いたします。そういうわけで、教育において環境・資源学を登用するべきです。 一方で、水産従事者も自らが使う・廃棄するモノが最初から最後まで資源であるという認識を持ち、それに対する処遇について真摯に考えるようになると思いますが、いざ導入しようとした場合に指導できる人材の派遣も必要で、専門指導機関等の設立や人材育成が必要です。
A 環境・資源学教育の充実
○教育項目へ環境・資源学を組み込み初等教育段階から、生活・住環境と世界資源のかかわりを知識習得し、モノ作りしている現場の実地体験をさせます。
○ 企業指導できる人材育成プログラムを構築
○企業指導する教育機関を設置
B 積極的に導入企業・導入予定企業との交流
○社会的貢献を果たしている企業を認知し、表彰する制度が必要です。
○一定規模の企業に対しては、法的規制の下に遵守を義務化することが必要です。
○導入企業の事例発表会などの開催が必要です。
○海外は企業と町との融合に関して先進性があるのでそれを学ぶ必要があります。
C 導入企業への理解を深める 導入企業はそのコストを製品に転化せざるを得ないという事実があります。この件を消費者にキチンと認知してもらう必要があります。また消費者は転化された価格が妥当であるという認識を持つ必要があります。
○循環資源活用が社会的に重要であるということの啓蒙活動が必要です。
○導入企業、商品の販売を積極的に支援する機能が必要です。

提言2【実施体制コミュニティ】
ゼロエミッションは、単独企業の努力だけでは到底なし得ないものであり、生産・流通・消費段階全ての企業や人が協力して作り上げることが必要です。
A ゼロエミッション協業プロジェクト化
○生産拠点と流通拠点と消費拠点間を群で捉え、各群内で必要な処理を行うインフラを共有する。
○生成された循環産物を確実に需要者に手渡す組織と体制作りの確立が必要です。

提言3【財政支援制度】
国民の生活・住環境は最重要課題のひとつでもあることから、国庫による導入支援を推進するべきです。
A安定的な財源の確保
○ゼロエミッション導入に当たってのインフラ整備や人材育成にかかる投資活動に対し、国としての積極的な援助も必要です。
B ゼロエミッション技術の研究開発と改善 水産物からでる循環資源は水分が含まれており、次の利用ステージへと運搬する際、あるいは資源の加工化に大きな障害となっています。
○処理加工の技術開発をおこなう教育機関、企業に対する資金支援策が必要です。
○汎用性を高め、導入コストを抑えるような研究が必要です。

日本青年会議所 水産部会
2003年度部会長 大倉 幸也

--------------

2005年度 日本青年会議所 水産部会提言

 〜 「マーチャンダイジングによる経営・営業力強化が必要です」〜

日本青年会議所 水産部会
2005年度部会長 大中 実

はじめに ヒトが機械同様に単なるエネルギー補給のための食事で良いならば、吸収効率のいい流動食、単価の安い食物のみを摂取すればいいのであって、そういった環境下ではお魚は「高い」食材としてその価値をさげすまされることとなるかもしれません。しかし私たち日本人は、食に対して「たしなみ」「楽しみ」をあわせ求めてきました。
ヒトが他の動物と大きく違うことのひとつに、生命活動にとって重要である食事を「文化」というソースで味付けすることが上げられると思います。そしてそれは万国でさまざまな地域性をもってなされ、「食文化」というカテゴリを築いてきたといえます。

水産業はわが国に古くから繁栄してきた一次産業であり、国民の食糧供給に貢献してきたとともに、四季と旬そして南北に長い国土・海域により国内でもさまざまな味が文化として伝えられております。ここ数年盛んになりつつあるスローフード運動は本来ならば我々日本の地から生まれてもおかしくない思想でありますが、西欧のほうがより危機感を持っていたのでしょうか、あるいは声高らかに訴える人が私たちの中から出なかったのでしょうか。
さて2005年11月に、20ヶ月連続で小売業の売り上げが昨対を割っている(日本スーパーマーケット協会)と発表されておりますが、水産物もご多分に漏れず売り上げ減少傾向にあります。一因として、すでに定着したコンビニエンスストア、ファストフード店などがその地位を確立していることがあげられ、水産食品流通にとってのライバルは、もはや同業他社ではなく他の食材、食産業であるといっても過言ではないのです。すなわちお魚を食べなくても、他の食材で十分賄える時代を迎えつつあるのです。

時代は高齢化、少子化、簡便化、そしてITが進むことによる生活時間の多様化など、食に関わる「時間」をどんどん減少させ、他に費やしていく方向に進んでおります。水産以外の食産業においても実は同様の問題を抱えており、それに対処する方策を模索してきておりました。日配食品、菓子業界、冷凍業界などはいち早く危機感をもち、その危機感をチャンスに変えてきたのです。その手法とは俗に言う「マーチャンダイジング(提案型営業)」と言われており、内容は「販売の最適流通のために、生産情報、中間流通情報、小売情報、消費者情報を重ね合わせ、そこから導いた仮説に基づき販売提案や商品提案すること」ということを行っているのです。これは情報量と情報を読み解く力そして実践する力が備わっていないとなしえない高度な営業展開方法です。

一方で水産食品業界は「鮮度」「こだわり」「旬」「漁模様しだい」などコントロールの難しい問題を抱えていることにかまけて、正面から問題解決に挑まなかったという経緯があると言われても反論できないのではないでしょうか。確かに他の食品よりは難しいのかもしれませんが、他の食品業界がどんどん進化していく中で水産業界だけが取り残されていっているように思えます。 ここで私たちが意思を持って方向転換していかないと、ますますこの格差は開いていくこととなります。
今現在は、漁をする人は獲るだけ、加工メーカーは造るだけ、流通業者は集荷・販売だけ、小売業者はあるものを売るだけというように、各階層が自分のカテゴリのみに関心を持ち、その他のカテゴリについてコントロールしていくという思想に立っておりません。先述のとおり漁獲不安定さ、価格、鮮度問題など複雑ゆえの役割分担、無関心主義なのかもしれませんが、これからは生産から需給バランス、流通コストの最適化、そして消費者ニーズにいたるまでをトータルで把握しコーディネートする必要があります。そして一刻も早く他の食品流通業態とのレベルを縮める必要があるのです。

提言

2005年をもって日本青年会議所水産部会は40周年を迎えました。私たちは会員・業界・消費者そして行政への運動を40周年ビジョンとして掲げ、今後の日本水産業および日本食文化に貢献すべく心新たに誓いを立てました。 本年は全国小会議と称して全国各地の産地業者様との意見交換を行い、全国の業界人が抱えている諸問題について共有しあいました。これらをまとめると共にもう一度全国水産業界に関係者に発信していただきたくご提言いたします。 また、私たち日本青年会議所水産部会メンバーが率先して本提言を啓発していくことで、必ず明るい豊かな水産国日本を再構築できるものと確信しております。
私たちはここに3つの柱と5つの施策からなる『マーチャンダイジングによる経営・営業力強化が必要です』をご提案いたします。 そして水産業を通じて「食」とは日本人にとって重要な文化であるということを広く国民に伝え、豊かで輝かしい日本人の心を共有していただきたく思います。

提言1
【マーチャンダイジング(提案型営業)の認識を広める】
モノが右から左に売れていった時代は終わり、安ければ売れたということすら通用しない時代となりました。売れる根拠の曖昧なモノおよびそれを取り扱う業者が淘汰され、売れる根拠を示しつつ流通・販売していくスタイルを採れる業者が生き残れる時代となっております。これは漁業者であっても獲るだけではなく中間流通、末端、および消費者ニーズを把握した上で的確なタイミングと量の漁獲が必要となっていくということです。これは今までの経験則で習得していくか、漠然と必要性があるとは思いつつも習得する場がないといった状況でした。これを関係者が学習し、広く浸透させていくことが重要であるという意識を体験プログラムとして組み込んでいく必要があります。この学習を通じて自分の業態以外とのネットワークが構築されると共に、食品流通業界全体から、あるべき水産物流通に気付かされると思います。 また、学習するにあたっては、指導的立場に立てる人材の確保と教育も必要であり、指導者が先んじて学ぶ必要が出てきます。
1-1 生産・流通・消費のしくみ教育を実施する。
・ 指導プログラムおよび教育機関の設置
1-2 教育支援窓口をつくる。 ? 漁業経営から適正流通経営などの相談窓口の設置
・次世代の担い手となりたくなるための窓口の設置

提言2
【実施体制および環境を強化する】
マーチャンダイジングを行うには、それ相応の情報が必要であり、情報インフラを国家レベルで提供することが必要です。現在は、どこの産地でどんな水産物がどれだけ水揚げがあり、浜値がいくらだったのかなどは未だにシークレットであり、それゆえ利益を享受する面もありますが、需要ロスにつながる面も多々あります。同様に流通面での数量バランス、小売業での需要情報なども積極的に開示し、産地、流通、小売が最適な需給バランスを目指すことが求められます。 また、実務面での物流構築には複数企業がひざを突き合わせて検討・協議する必要があり、定期的委員会の開催が必要不可欠となります。
2-1 インフラを整備する。
・情報共有化システムの構築 (ITを活用する。産地情報、流通情報、小売情報のリアルタイム受配信)
2-2 情報からビジネス構築に発展させるコラボレーションの場を提供する。
・ マーチャンダイジング構築・検討委員会の開催

提言3【財政支援制度の充実を図る】 上記提言1,2を実施するにあたって、一定額の助成金支援をすることで、広範囲の参加者に門戸を広げることが可能となります。
3-1 財政支援を行う。
・補助金制度の検討と構築

以上

日本青年会議所 水産部会
2005年度部会長 大中 実